世の乙女ゲーの主流はキャラと声優と甘い台詞ありきで、
それを彩るためにストーリーや世界観が準備される、というものかと思います。
このゲームにはあからさまな甘い台詞はありません。
キャラはあくまでストーリーを語り動かす「登場人物」です。
ストーリーは緻密な世界観を土台として作られています。
世の人は「そんなの乙女ゲーじゃない」と言うかもしれません。
けれど私は、これを乙女ゲーと呼びます。
私の望む「乙女ゲー」は、まさにこういうゲームです。
待ってました。心の底からお待ちしておりました。
現実世界を舞台とした、ちょっとふしぎなお話です。
主人公は良家のお嬢様。家を飛び出しまるで恋人のように仲の良い兄と二人で暮らしながら、高校生活を送ります。
動かぬ時計塔の前で「死神」と出会ったのをきっかけに、兄の書いた絵本の話をなぞるようなふしぎな出来事が次々と巻き起こり、その出来事を通じて少しずつ、心の闇と向き合っていく……と、そんな感じの話でしょうか。
攻略対象は以下の通り。かな?
・蒼
自称「死神」。一切の記憶がなく、感情も乏しい。
ひたすら淡々としており基本天然。
主人公と同じく本の虫。主人公の通う古本屋で厄介になりながら、本を読み、主人公と交流し、人間に関する見識を深めていく。
・遠野十夜
主人公の兄で絵本作家。
スキンシップ過多。時々嫉妬もあらわにする。どんな時も主人公の味方。
・日生光
元生徒会長で主人公の先輩。調子が良くて言葉も軽い。
たぶん作中の「恥ずかしい台詞」は大半がこの人担当。
最初から主人公にひたすら言い寄ってくる。
・桐島七葵
主人公の一学年上、日生と同学年。剣道部部長。発想が完全日本男児。休日は眼鏡。
作中おそらく唯一の良識人でツッコミ担当、だけどあまり報われていない。
……とは言えこのゲーム、プレイしていくと主人公を含めて「というのが表向きなんだけど実は」の嵐で、
もんのすごいクセのある奴ばかりです。
しかしそれをちょっとでも言うとネタバレになる歯がゆさ!
私は蒼と桐島先輩贔屓で。
蒼はキャラも魅力的だけど話が一番しっくりくるのが何より好き。
桐島先輩はむしろキャラが私好みすぎてすっ転んだら最終的に発覚した立ち位置がまた素晴らしくて落下しました。
攻略対象じゃないんだけど、主人公の同学年の女友達と喧嘩友達(?)がほんとにほんとにほんっとにかわいくて! ほんとかわいくて!!
主人公と女友達がかわいい乙女ゲーに外れはない、というのが今作でも見事に当てはまりました。
この3人のやり取りほんとかわいくてだね! 何度泣かされたかわからないよほんとに!!
システムはテキストアドベンチャー。たまに表示される選択肢によってルートが分岐していきます。
「二人のどちらに肩入れするか」というのが基本で、お目当てのキャラを贔屓してれば難なくルートに入れる親切設計。
スキップ機能も遡り機能も充実。2周目以降はどの章から始めるか選べるので、周回プレイにも大変優しい素敵なゲームです。
なにがすごいってこのゲーム、
日本語が崩壊しているものが少なくない乙女ゲーの中できちんと日本語が成立してるってだけで私は心の底から感謝と共に額を地に打ち付けたいというのに、
全キャラクリアしても明確な答えは提供せずあれこれ考察したくなるという練りに練られた話がとんでもなく私好みで、
さらに言うと私、テキストウィンドウ内でのみテキストが表示されるスタイルで地の文のあるテキストアドベンチャーがほんと苦手なんですけど、
このゲームではまったく気にならなかったんです。
そしてフルボイスは大体飽きて、そのうちテキストだけ読んでボイスは飛ばすことの多い身でして、
「ボイスあるとテンポ悪くなるから要所だけにしてほしいなあ」というのが持論だった私が、
このゲームに関しては最初から最後まで、全部聴けたんです。
地の文も、台詞のテキストも、ボイスも、そして効果音も立ち絵もスチルも、
すべてが互いに補完し合ってひとつの作品として完成しているというのがほんとに、本当に感動しまして!
私の求めているゲームであり、そして私の苦手意識に真っ向からぶつかりつつも遥か上方を駆け抜けていった、
そんなゲームを作ってくれたTAKUYOさんに心からの感謝を!

PR
COMMENT